バロック音楽を考える
アンサンブル・ミリムその他でお世話になっている、慶應義塾大学日吉音楽学研究室の佐藤望教授より、新著の献本を頂きました。
バロック音楽を考える(音楽之友社):amazon.co.jp
こちらは、2015年の慶應義塾でのバロック音楽史の講義を元に加筆したものだそうですが、まず目次を見ただけで、独特の切り口が一目瞭然です:
音大ではない=受講者に必ずしも音楽史の基礎知識が有るわけではないというコンテクストにおいて、ややもすれば専門的にならざるを得ない内容を、一般教養の側面から興味を持ち得るよう、章毎にテーマへの導入に工夫を凝らしています。
例えば、第3章ではサウンド・スケープに絡めて音楽の聴取形態から、器楽の発展へと話が移行し、第6章ではジェンダー論とフェミニズムを、フェルメールの絵画やクープランの標題音楽と結び付けつつ、カストラートとバロック・オペラの声種概念へと発展させていきます。
第4章で取り扱われる旋法や調律法については、ある程度理論的な解説をきちんとせねばならないため、講義のように、実際の音実例を聴きながらであれば理解がし易いであろう所が、文章だけでは若干難しく感じる部分もありますが、例えば本書に対応するメディアテーク的なサイトが準備されるなどして、そこで(語学教材のCDのように)音を聴きながら読み進めることが出来れば、音楽史入門書としての価値は更に増すのではないか、と思います。