アルチーナ

アルチーナ

4月の大半は、こちらの公演の立ち稽古に参加していました。

二期会ニューウェーブ・オペラ劇場〜アルチーナ

3年に1度の新人公演で、バロック・オペラをやるというのは中々の冒険だと思うのですが、前回のジューリオ・チェーザレに続きタクトを執るのは鈴木秀美さん。私は古楽界とオペラ界の橋渡し役として稽古を仕切っています。

今回の演出のエヴァ・ブッフマンさんはスイス生まれ、オランダ在住の演出家で、チェロと音楽療法、そして心理学を専攻されていたというバックグラウンドの持ち主。イタリア語も堪能で、特にレチタティーヴォにおいては一つ一つの台詞を、心情の変化を必ず先行させて、自分の言葉として語るという(当たり前ではあるが、やると容易ではない)作業を根気強く続けています。

話がそれますが、先日やはり舞台業界の友人が「昨今の日本の俳優はキャラクターを演じてばかりで、いざそうではないものを求められるとどうして良いかわからなくて混乱する人が本当に多い」と嘆いていました。

オペラにおいても、例えばザラストロは家父長的でさえあれば、リゴレットなら背中を丸めて卑屈さを強調すれば、スカルピアなら傲慢さと暴力性を全面に出しさえすれば、後は声の力で聴衆を魅了すればいいと思っているのではなかろうかと感じる歌手の方に出会うことはしばしばです。それは間違いとは言えないし、それでお客様が喜べばいいじゃないか、という言い方で演出の「不要性」まで語る方にも遭遇します。

そういう方を論駁するのは恐らく難しいし、それで事足れりとされる方にとっては、演技とはそういうものではない、と言ったところで余計なお世話なのだろうと思います。が、上記の友人の言葉を借りれば「それはアイドルであって役者ではない」のだと思います。

私はこれからも一人でも歌手が役者として舞台に立てるように、微力ながら尽くしていきたいと思うわけです。