フランス語はなぜ難しいのか

フランス語はなぜ難しいのか

この2月は2つのフランスオペラのプロダクションに関わっています。

新国立劇場《ホフマン物語》

小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクト《子どもと魔法&ジャンニ・スキッキ》

両方のプロダクションで発音指導もする立場(新国ではプロンプター、小澤塾では合唱指揮)にあります。さて、これまでディクション講習会を何度か開催する度に感じていたことですが、

「フランス語は読まない綴りが多くて読みづらいし、鼻に響きが抜けて歌いづらい。」

と多くの歌手が考えているようですが、これは濡れ衣だと声を大にして言いたい。

まず、読まない綴りが多いって言ったら英語だってどっこいどっこいで酷い(”light”の”gh”とかどこに行ったの?)。

むしろフランス語はアルファベット全部読まないように見えて、複数のスペルの組み合わせはほぼ1対1対応で発音が決まっている(”eau”は必ず「オ」とか)。

鼻に響きが抜けて、という点については確かにnを鼻に抜く鼻母音というのがあるけど、それを除けば、すごく口をよく動かして明るい響きで喋るのが基本。

きっと「アザブジュバーン」みたいなネタにされてしまったのと、フランス人の気取ったイメージとか相まって、鼻にかかった感じのステレオタイプができてしまったんだろうけれど、それが心理的障壁になってしまっているのは大変困る。

単語にアクセントが無くて綴りが延々と繋がっていく(リエゾン)のも、慣れれば日本語同様抑揚だけでダラダラ喋れる。

 

・・・とここまで書いて、気が付いた。違う。そんなことが問題じゃない。

フランス語が、結局「苦労の割に報われない」だけの話だ。

クラシックの歌手の多くはイタリア語and/orドイツ語を読めるようになれば、とりあえず一般的なレパートリーの9割は歌える。それに加えてカルメンを勉強しておけば、歌手人生に不都合を来すことはまず無い。

フランス留学するとか、フランス歌曲を専門にするとかでない限り、必要ない。必要ないことに人間は労力を割こうとしない。やらないと人生が詰むのであれば、大抵の困難に人間は立ち向かえる。

ああ、かわいそうなフランス語。僕はもう少し君がまっとうに皆に扱ってもらえるよう、今日も頑張るよ。

そして、いつか何とかしなきゃ、と思っているあなた、ディクション指導のお申込みはこちらから。