19世紀のセッコ・レチタティーヴォ

19世紀のセッコ・レチタティーヴォ

新国立劇場では《セヴィリアの理髪師》のリハーサル真最中です。このオペラは1816年の曲ですが、ヘンデルやモーツァルトのオペラ同様セッコ・レチタティーヴォがあります。しかし・・・

昔から、なんで19世紀のオペラでチェンバロ使うんだろ?と実は不思議に思っていたのです。少なくともフォルテピアノなんじゃないか・・・?

という事で私の知恵袋、JSTORであれこれ調べてみると、ドンピシャの記事がヒット:

‘PRIMO VIOLONCELLO AL CEMBALO’: L’ACCOMPAGNAMENTO DEL RECITATIVO SEMPLICE NELL’OTTOCENTO(イタリア語)

要点をまとめると:

・”Cembalo”という名前で呼ばれていた楽器はピアノフォルテまたは”Tafelklavier“(スクエアピアノ)である可能性が高い。
・イタリアの劇場では1830〜50年にかけてオーケストラピットから鍵盤が消えた。
・しかし、一般に指揮者=コンサートマスターであり、中央に座っていた”Maestro al cembalo”は、舞台上の歌手の音程が怪しくなった時に、そっと鍵盤から音をあげる以外は、両サイドに座っていたチェロとコントラバスの首席奏者の見ているスコアを譜めくりするのが主な仕事だった。
・このチェロとコントラバス首席奏者こそが、セッコ・レチタティーヴォを伴奏しており、コントラバスがベース音(3弦の楽器のため実音)を担当、チェロはその上のハーモニーをアルペジオで即興した。
・但し、ピアノフォルテのみ/弦楽四重奏に置き換え/弦バスのみで和音は聴き手の想像力に委ねる、という場合もあったらしい。
・ドイツ語圏ではしばしばレチタティーヴォ(セッコだけではなくアッコンパニャートも!)を台詞に置き換えて上演していた。
・パリではフォルテピアノ+チェロという組み合わせの記録がある。

という事なんだそうです。他にも、イタリアの当時のオーケストラの弦楽器の人数比とか、ピット内の配置など面白い情報もあるので、イタリア語が読める方は是非ご覧になってみて下さい。