NemoWV2 〜 主よ、根本は傷ついた

また逃げようと思う。
だが、バッハ畢生の大作『フーガの技法』の後に何が可能だろうか？

彼の晩年のもう一つの大作に『音楽の捧げもの』がある。
その主題は不自然でごつごつとしている。
半音階――それを当時のドイツ人は”Passus Duriusculus”「険しい道のり」と呼んだ。
それは嘆き、悲しみ、そして受難を表すためのレトリックとして用いられた。

そう、2度目はより困難な道を歩まねばなるまい。
バッハとその先達2人による「半音階的フーガ」だけを集めてお届けする。

中でもシャイトの曲は、バッハですら未完に終わった4重フーガだ。
”Io son ferito, ahi lasso”《ああ、私は傷ついた》

愛する音楽にずたずたにされる幸せ。
ご笑覧あれ。

NemoWV2〜主よ、根本は傷ついた　根本卓也チェンバロリサイタル　Vol.2